なっちゃんと年越し (28)

なっちゃんと年越し

なっちゃんと年越しと初詣は毎年の事になっていた、過去二年は僕の家から近い神社に大晦日の夜から年越しと初詣をしていたが、2018年はなっちゃんの家から近い神社にしようという話になった。いつもと流れが変わると良いなと思ったりした、僕の会社の業績はとても悪かったから。

毎年思う事なのだけれど、大晦日の夜とお正月の夜はパニック障害の不安を感じない。みんなが起きていて、夜遅くまで起きていても良くて、早く寝なくても良いという感じを子供の時から知っていたからだと思う。別に今も昔もいつ寝ようが良いのだけれど、この日は気楽なんだ。とにかく、パニック障害を怖いと感じたり思ったりがなくて、何か良い事の始まりみたいな気になる。

さて、大晦日の夜になっちゃんに連絡してみると、NHKの紅白歌合戦を見ていると言っていた。僕はテレビを見ないのだけれど、見たいグループの出番の少し前になっちゃんが教えてくれたのでワンセグで見ることにした、良いパフォーマンスだった。Perfumeなんだ。二人とも音楽が好きだから、音楽のシェアなんかもしていた。趣味が同じことは良い事で、その話で時間も共有できるのが素晴らしいと思う。

段々と除夜の鐘の音が聞こえてきて「2017年も終わりが近い、2018年はどうだろうか」とか思ったりしながらなっちゃんの実家に向かった。車を置かせてもらい、二人で歩いていると、ぽつりぽつりと人が神社に向かっているのを見て「やっぱり大晦日は安心する」なんて思った。

なっちゃんと話をしながら進んでいると神社に到着した。みんな並んでいる、でもそれは人で混んでいるとは思わないので、「やはり大晦日は特別なんだ」と思った。どんどん人が後ろに並んで増えていくのだけれど、少しも不安にはならない、なっちゃんも「大丈夫そうかな?」なんて思ってない。

0時0分になってみんなが「あけましておめでとうございます」と言い出した。僕となっちゃんもそう言って、付け加えて「今年もよろしくね」と

なっちゃんが「お父さんとお母さんがいる!」と言った。だいぶ後ろだった、僕たちの出発が早かったのかもしれない。参拝してから甘酒をいただいた、この温かさが体に優しい、風が強い日だったので余計にそう感じた。

ご両親を待っていると、しばらくして二人が来た。やっぱり「あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします」と挨拶した。なっちゃんのお母さんとはよく話す時があったので緊張しないのだが、お父さんにはいつも挨拶して頭を下げるばかりだったので、やっぱり緊張した。

そろそろ帰る雰囲気になって神社の外に出ると、とてもたくさんの人が並んでいた。早く並んでよかったと思ったが、仮に並んでいたとしてもパニック障害の不安は無かったと思う。

帰り道は僕たち二人とご両親は少し離れて歩いた。僕は、携帯ライトを取り出して道を照らすと、なっちゃんは「ありがとう、持ってきてくれてたんだ」と言った。なっちゃんの実家に着いて「それではまたね」と言って僕は家に帰った。

家に帰ってから、「すぐに眠れるかな」と思っていたが、なかなか眠れなかった。でもそれは「眠れなくても良いかもしれない」「みんな起きているんだ」とか僕なりの決まりが、決まりではないと思ったからかも知れない。これがヒントになったのか、今は24時間社会なんだから「夜が怖い」とか「寝ないといけない」とか思わなくて良いのかもって思えるようになった。

それで多少寝つきが悪くても良いかと思えるようになった。夜が怖くても、この時間に働いている人もいるわけだし、気にしなくて良いとか思うようになった。早起きが苦手なので会社の営業時間も午後からという事にした。

何の気なしに掴んだヒントだったが、これは実は大きなヒントだった。