なっちゃんとクリスマスイヴ (27)

なっちゃんとクリスマスイヴ

なっちゃんとクリスマスイヴはどこに行こうと話をしていて、静岡県浜松市の駅周辺にしようということで決まった。どんな理由で決まったか、あまり詳しく覚えていないのだが、二人とも好きなブランドのお店があったからだと思う。

僕は浜松にしばらく行ってなかったのでワクワクしていた、高校生の時にテクニクスのターンテーブルを買ったのは浜松の駅周辺のレコード屋さんだった。僕にはレコードという音楽の趣味もある、DJをやりたいと思ったわけではない。

12月24日だから混むだろうとは思っていたけれど「IKEA」よりは絶対に少ないだろうと思い、避け方も知っているから大丈夫と思い込むことにした。

当日の出発は昼の2時過ぎぐらいだったと思う、なっちゃんが寝坊したとかではなく、少しゆっくり出発という話になっていた。スローなスタートだけど焦らず運転をした、静岡県では旧つま恋の帰り道で一旦停止の違反があったので慎重になるものだ。

駅の近くの駐車場は満車で停める事が出来なかったので、少し離れた駐車場に停めることにした。寒かったけど二人で元気よく歩いた、日曜だったがそれほど混んではいないと思った記憶がある。

なっちゃんに道を教えてもらいながら、その二人とも好きなブランドのお店に入った。広さがちょうど良いお店で、僕は真剣に財布を見て選んだ。自分のクリスマスプレゼントを選んでいるのだ、二つに絞ったがどちらにしようか5分ぐらい悩んだ。自分は物持ちが良いので長く使う事をイメージしながら決めた、外は茶色で内が水色の牛革財布をなっちゃんに買ってもらった。その場で中身を移し替えて、すぐに使い始めた。自分で選んだけど、なっちゃんと一緒に見て比べて選べて決めれたのが良かった。嬉しかった、とても。

それから、駅近くの楽器屋さんに入った。なっちゃんはギターに興味があって買おうか悩んでいたが、その時は買わなかった。たぶんピンとこなかったのだろう。

日が沈みだしてお腹が空いたねという話になったが、夕飯にはまだ早かったので、モスバーガーで軽く食べることにした。街はイルミネーションでわりと輝いているのを窓越しに見て、少し歩いてみようかという事になった。

クリスマスイヴというだけあって、夜になると人が増えてきたように感じた。パニック障害の発作は出ないだろうと思ったが、それでも安全策をと思い安定剤を飲むことにした。なっちゃんには「安定剤飲んだから大丈夫」と伝えた。

なっちゃんはアクセサリーを見たいと言ったので、向かった。百貨店でそれなりに人が多かった。やっぱりクリスマスイヴだ!と実感した、明石家サンタは見なくて良いとも思った。

なっちゃんはネックレスを選び出した、ダイヤモンドが入っているのを見ていると店員さんに話しかけられて、試着もしだした。普段使いと職場にも着けていけれるようなのが良いと言っていたと思う、それで二つに絞られた。なっちゃんはかなり悩んで悩んで決めた。ちょっとびっくりした、そのびっくりした話はそのあと歩きながらした。

そして、なんでだかビックカメラにも入った。なっちゃんはヘッドホンとイヤホンを見ていた、けっこう種類揃ってるねなんて話をしながら買わなかった。「人が多くても大丈夫になったね」と言われて「そうだね」と言ったが、僕は少し疲れていた。

なっちゃんが「ロフトに行きたい!」と言ったのでエスカレーターで登り始めたのだけれど、「ちょっとキツイ」と僕が本当の事を伝えると、ガッカリした顔になったが、続けて「ご飯食べに行こうよ」と言うと少しだけ笑顔になった。この時はパニック障害の発作の前兆だとかではなく、純粋に疲れてキツイと言った。まだ体力も本調子ではなかったのかも知れない。

車に戻っカーナビに「さわやか」と入力すると、なっちゃんは少し元気になった、いや機嫌がやや良くなったが正しい。「さわやか」に着いたがそんなに混んでいなくて5分ぐらい待つだけだった。それで美味しいハンバーグとステーキをニコニコしながら二人で食べた。

帰り道で、道に迷ったのだけれど、なっちゃんが景色の異変に気付き「ストップ」と言ってくれた。「道に迷ったよね?」と言うので「うん」と言うと「バックできるの?」と言ったので「戻る以外ないね」と言って戻った。竹か木かの真っ暗な道だったのでセントレアの話に出てくる山道より怖かった。なっちゃんには「本当にやめてよ、先に何もなかったらどうするつもりだったの?もう!」と笑いながら言われた。

違反はなかったけれど迷子にはなりかけた静岡県でした。パニック障害の発作が無かったことは良かった事だ、この日の記憶が少し鈍っているのは、覚えていて書いていないこともあるが、嬉しかった事が大きすぎて、他がピンとこないのかも知れない。