なっちゃんにラブレターを (45)

なっちゃんにラブレターを

なっちゃんは別れる事を強く決めていた。だから、なかなか会う事をしてくれなかった。頼んでも断られた。

ある日、「仕事帰りなら会える」とメッセージが届いた。僕は急いだ。何か少しでも望みをつなぐ事をしようと。

一つだけ思いついたのが、ラブレターだった。

僕は人生で一度もラブレターを書いたことが無かった。書く日が来るとも思っていなかった。でも、もう書くしかなかったので、レポート用紙に書く事にした。レターセットを買おうか悩んだがそんな問題ではないという事は知っていた。

しばらくの間、書くという事をしていなかったので字が汚かった。後になっちゃんに「漢字いっぱい間違えてたよ」とも言われた。余計に恥ずかしかった。だから、こんなに恥ずかしい事を、今までした事が無かった。

なっちゃんは、僕にしばしば手紙を書いてくれた。それのお返しの意味もあった

とにかく必死だった。何とかして、なっちゃんの気持ちが途切れないようにと。

ここに書くのが恥ずかしい訳でなく、思ったことをひたすら書いていたので、内容を覚えていない・・・。

例えば、「少ししてよりが戻ったら、絶対結婚してください」とは書いた。

例えば、「誰よりも僕がなっちゃんの事を愛しています」とも書いた。

反省文を書いたのではない、僕はラブレターを書いたのだ。手遅れのラブレターが、どれだけ虚しいか知ってるかい?

でも、僕は良い事をしたと思っている。大好きな人に愛を伝えただけだ。

本当はフラれるって分かっていながら書いた。だから冷静でなかった。書きながら泣いていた。それは、とても泣けた。

それは、二人での幸せな時間がフォーエバーでない事が、どれだけ悲しいのか。

それに、僕のパニック障害が悪くならないか。なっちゃんのてんかんが悪くならないか。

そして、なっちゃんの時間を無駄にさせてしまっただろうか。

ラブレターを書いていくうちに、冷静にもなった。

なっちゃんの家庭と、僕の家庭と釣り合っていないな、とか。

その他にも考えてみた。結婚には難しい壁があると思った。

だだ、これだけ愛し合った二人が離れて、幸せになっていくのだろうか?と思っていた。僕はなっちゃんという人に一番心を開いていた、一番信用していた、それに零れるまで愛した。

決して、悲観したばかりではなかったが、やはり愛が冷めるというのは気持ちが滅入るのである。

なっちゃんの仕事の帰りにラブレターを渡して読んでもらった。泣きながら読んでくれた。

チャットモンチーの「余韻」をお聴き下さい。