なっちゃんと静岡県へ 中編 (16)

なっちゃんと静岡県へ 中編

さて、アーチェリーをやりに行くことになったが、バスの時間を逃したので歩いて行くことにした。歩いても歩いても大体が木と芝だった、あとアスファルトの道。なっちゃんに苦笑いしながら「ごめんね」と言うと「良いの良いの、自然が好きだって事はよく分かるから!でもこんなに人の居ない所は、逆に怖くないの?私ちょっと怖いけど」と言った。

確かに怖いよなと思ったけど、元陸上部の僕は走って逃げれると思ったので、パニック障害の不安とかは怖くなかった。言い過ぎた、なっちゃんが一緒に居てくれるから怖くなかった。誰ともすれ違わない山道なんて怖いよ。

ずいぶん歩いてアーチェリー場に着いた、なっちゃんは運動不足だから少し疲れていた。二人で自販機でお茶を買った。そこにはカップルが一組いた、そのカップルも、アーチェリーをやる様子だったので少し緊張した。ほら、男って負けたくないから

アーチェリーのやり方の説明を受けて、いざ本番だ。なんとなく要領を掴んできた時に、目が見えていないことに気が付いて、メガネをつけてやることにしたら点数が良くなった。少しだけなっちゃんには勝ったけど、カップルの男性には負けた。もう一回やろうと思ったが、なっちゃんは「腕がもう無理」と言ったのでやめることにした。僕も腕の感じは、明日筋肉痛になるなといった具合だった。

帰りのバスには夫婦と子供、そのカップルと僕たちが乗った。なっちゃんが小さな声で「大丈夫そう?」と聞いてくれた。僕は小さな頃から何度も乗っていたので「何が?」と思ったのだけれどマイクロバスだから「狭いけど大丈夫?」なんだと気付いて「これは大丈夫だよ、ありがとう」と言ってなっちゃんと手を繋いだ。不安とかでなく、カップルに負けたくなかったので手を繋いだの。

ホテルに戻って少しグダグダした、それから夕食前にホテルの中を見て回ることにした。バーがあってそこから生ピアノの音が聴こえていたので、なっちゃんは「いいね~」と言っていた。なっちゃんはピアノが得意なので、昔から音には敏感に反応してしまう体質なのだ。お土産売り場も食後に行こうと決まった。

食事をするところに行くと、少ないが思ったより人がいた。たぶん近くでイベントがあったので、それに行った女子たちではないかという話で二人で勝手に解決した。

夕食は特別に美味しかった、なんの良い所も無い旧つま恋かと思っていたら違った。ここにきて二人のボルテージはストップ高の気配だった。ビュッフェが素晴らしいと思ったのは、こと時が人生で初めてだった。何を食べても美味しいのだから素晴らしい事だと思った。なっちゃんもかなり喜んでくれた。言うならば、唯一の救いとお客さんを満足させるポイントがこれであったと思う。デザートも完璧だった、二人ではしゃいでいたのだろうか、スタッフの方が「お写真お撮りしましょうか?」と写真を撮ってくれた。

子供の時から東京の高いホテルで朝食ビュッフェとか行ったけど、「静かに走らず少なめに選びなさい」が教育であった。夕食はルームサービスだったので、好き勝手に食べれたけれどエビフライがとてつもなく美味かった事と、お茶漬けが上品だったことぐらいしか覚えていない。経験というのは本当に大切だと思う。新幹線はいつもグリーン車だったので、初めて普通車に乗った時に狭いし固いしうるさいし、何かおかしいと思って新幹線の電話から親に確認したのを覚えている。

【番外編】お土産売り場では、僕はよく行くお店のおばあちゃん(88歳)に高級なお茶を買っていくと言ったらなっちゃんは「やさしいんだね」と言った。そのおばあちゃんはいつも元気で、貪欲で面白い人だ。何度人生相談をしたことだろうか、そして何度言われたことだろうか「男だろ、遊びの心のない男なんかこれっぽっちも良くない」とか「仕事をしたら遊べ」とか「早く嫁さんもらえ」とか「若いのが一番羨ましい」とか。文字では書けないぐらい。お茶のお土産はすぐに持って行って「これ掛川のお茶で美味しいはずだから飲んで」と渡したら「あら、お客さんにお土産なんて貰ってお返しの準備なんてないけどどうしましょう、どうしましょう」なんて言い出したので「今度、感想聞かせてくれたら良いにしよう」と言って帰った。次に行ったときに「お茶どうだった?」と聞くと「あれは美味しかったねー、高かったと思うよ」と言った。ボケてなかったので安心したのである。たまたまそこに孫にあたる人がいて「掛川茶の人ですか?」と聞かれ「はい」と答えると「おばあちゃん喜んでたの、ありがとうございました」と言われた。良かったなと平和な気持ちになった。【番外編終了】

それでなっちゃんとはお土産売り場でジュースを買って部屋に戻ることにした。食いしん坊な、なっちゃんがアイスを食べたいとも言わなかったのは、ビュッフェが満足だった証拠だろう。お風呂に入ってから、いつもの薬を背中に塗って、やっぱり言うのです「お母さんより丁寧に塗ってくれるの本当に幸せ」と。

ベットが4つもある部屋だったのでどこで寝ようなんて少しはしゃいだ、でも二人で一つのベットで寝た。とっても愛し合って

続く