なっちゃんの就職 (7)

なっちゃんの就職

なっちゃんはアルバイトをしながら、正社員の仕事を探していた。

そんなにこだわらなくてもと思っていたが本人にはこだわりがあったようだ。

退職した会社には、病的に行きたくなくて出社前に「行けないよ」とか「おなかが痛い」だとか何度も泣いて電話をしてきた過去があった。

就職なんて僕には無理な話なのだが、調べてみてこれどうかな?とか3か月前から出続けてるから怪しいな(笑)とか言ったりした。

ある時に、新聞広告に入っていた新規支店オープンの募集があって職業内容的にも良さそうだと思ったのがあった。それが不思議なことになっちゃんも、なっちゃんの母親も気になった会社だった

なっちゃんは3社にエントリーした。ボーナスとか休日数とかをしっかり見ていた。僕には分からなかったが、なっちゃんが教えてくれた。なっちゃんは本当にお利口さんで僕とは釣り合うような感じではないのだけど、大学生と小学生の差ぐらいあったので優しく見守ってくれたのだろう。

3社とも良い面接が出来たわけではなかったようだが、結局3人が気になった会社の感触が一番良かったようだった。

数日後、平日の昼になっちゃんのスマホが鳴った。ただ、心配性のなっちゃんはなかなか出ようとしない。「いいからでなよ」と言ってみたら不安な顔をしてでた。電話口から3人が気になってた会社の名前が聞こえた。僕はガッツポーズをした。なっちゃんが嬉しそうな声のトーンになっていくのでバンザイもした。

電話を切って「採用決まった」と言ったので「おめでとう」と言って二人で喜んだ。2社には辞退の連絡しないとってすぐ済ませていた。

この時のなっちゃんは本調子でなく、少し不安そうでもあった。ただ、いつものように「大丈夫」とか「そんなに緊張しなくていいよ」とかなっちゃんを安心させる術はいくらでもあったので出し惜しみなく出した。

こういったときに思うことは自分以外の人も「不安や心配と戦ってるんだな」と感じたかな。僕のパニック障害も、自分をコントロールする事だなと思ったりする。実際に自分を客観視することは、パニック障害と付き合っていく上で大切だと思う。それに付け加えてネガティブにならないことも大切だと思う。

会社に行くようになってから、なっちゃんは出社途中に電話してきたり、帰路でも電話してきたりした。毎日不安だったんだと思う。さみしがりやさんだなと思いながら、話を聞いたり励ましたりしていた。いや、まだ心が癒えていないからサポートしないと、と思ったから支えたのだ。ただそれはパニック発作と同じでずっと続くわけでない、ある時からなっちゃんも強くなっていった。