なっちゃんの病院で名古屋へ 後編 (31)

なっちゃんの病院で名古屋へ 後編

ずっと一人で名古屋の栄を見て回って、本当のウインドウショッピングをしていたが、少しはなっちゃんの検査の事も頭にあったので何度も時計を見ていた。

電話が鳴って急いで出ると「検査終わったけど、いまどこにいる?」といった感じだったので、なっちゃんの病院の前に向かった。

自分がどこに居るかなんて上手く伝えられるわけがなかった、ここは名古屋の栄でまあまあアウェイなんだ。

無事に到着して、まずなっちゃんの荷物を駐車場の車に載せることにした。「けっこう近くだね」と言ったのだけれど、自分が朝にどこから走り出したのか覚えていないようだった。それから、検査の結果と説明が午後にあるという事も知らされた。なんだか少しドキドキした、良くなっていると良いなとか思っていた。

「ねえ、お腹すいちゃったー」と言ったのは当然で、朝ごはんは前日買ったパンを二人で半分っこして食べただけだった。なっちゃんが道を案内してくれて、なんだか不思議な気持ちになったけれどルンルンしながら進むことにした。

向かったのは「名古屋三越パルコ店」通称ラシックである。その中にもあったスープのお店は、京都の時にも行ったお店で量など本当に丁度いい。二人ともニコニコしながら食べた、僕は京都の時の事を少し思い出したりしたが、なっちゃんには言わなかった。その、つまり昔と今とでは違うなと思ったりしたのだけれど口に出す必要はなかった。でも少し言ったかも知れない

それから、少し割高そうな雑貨店に入った。友達に子供が生まれた話なんかをしていたような気がする。たぶんなっちゃんも割高だと思ったのかそれほど真剣には見ていなかった。スイーツ屋さんの前で「いいなー」と言うのは決まりだったが買ったりしなかった。

病院へ戻る時間になったので向かった。なっちゃんが一人で診察室へ入っていった。僕も入って良ければ入るみたいな感じで待っていたら「入って」と呼ばれた。 夫婦みたいな気持ちがした。それと緊張していた。でも、僕は病院は安全な場所だと思っているのでパニック障害の不安などしなくて良い。

主治医の説明が始まった。問題ないといった内容で今と同じように朝と夕方に薬を飲むようにといった事だった。僕は2つ質問をした、それに対しても親切に説明をしてくれた。それと若いという事が何より有利なので「早く子供をつくりなさいガハハハッ」と言われた。僕の不安は無くなった。主治医が言うのだから大丈夫なのだ。

あと、葉酸を飲むようにと言っていたので、僕は後日買って持って行ったが「すぐに飲むように」という事でなく、妊娠したらということだったようだ。恥ずかしかった。

それから、再びラシックに向かった。なっちゃんは脳波の検査の時に、ジェルみたいなのをつけるらしく、それを洗い流したのだけれどしっかり取り除くのはなかなか難しいようで、気にしていた。確かによく見たら気付いたけれど「気にしなくて良いよ、気にならないから」と言った。なっちゃんも大変だなって思った。

ラシックには色々なブランド店が並んでいる。鞄屋さんの前で「私が選んだ誕生日プレゼントはここのお店で買ったの」と言われたので入ってみた。たくさんの鞄が並んでいた、僕が身に着けているリュックがあったので「値段見ちゃダメだよ」と可愛く言った。でも、どの鞄より僕のリュックが一番良かったので「この僕のカバンが一番だ」と言うと、なっちゃんは目が嬉しそうになって少し照れながら「良かった」と安堵をこぼした

色々見ているうちに少し休憩をしようと、ケーキ屋さんに入った。なっちゃんは僕に外の景色が見えると、怖がるかと思って気にかけてくれたが「大丈夫だよ」と言って外の景色が見える席に座った。ケーキとコーヒーとペリエを食べて飲んで「これがデートだ」と思った。

あと、なっちゃんに景色が見える席に座らせてあげないと!とも思ったが、なっちゃんは僕が笑顔でなっちゃんの写真を撮りながら、美味しいケーキを二人でニコニコしながら食べている姿で満足してくれていると思う事にした。そう、野暮な彼女ではないのだ。

そして、また二人でいろいろ見ていたのだが、僕は気が付いた。なっちゃんは男との買い物に慣れていなかった。全然買い物に集中しきれていないのだ、たぶん自分が長く見て回るといけないとでも思っていたのかも知れない。「もうちょっといい?」とか「もう一回見ても良い?」とか気を使いながら浮かれていた。可愛らしいと思って僕は心の中で笑っていた。

僕はちょっと薄着で寒かったのでMA-1を買ってその場で着ていくことにした。色で悩んだが、なっちゃんが「似合うよ」と言ってくれたので後押しされて買う事が出来た。

名古屋の栄から帰ることにした。なっちゃんは「コンビニに寄って」と言うので寄るとブラックのコーヒーを買っていた。僕はカフェラテにした。「帰り道に寝ないから」と言ってくれた。そのための眠気覚ましだったわけだ。

途中でなっちゃんオススメのハンバーグ屋さんがあるというのでそこに寄って夕飯を食べた。また行きたいと思う美味しさだった。話も盛り上がって良い一日であった。良いデートでもあった。

朝の渋滞でなっちゃんが焦ってイライラしていたが、パニック障害でも車の運転で渋滞が苦手という方がいるみたいだ。気持ちを落ち着けて運転しないと事故の原因になってしまうのでいつも気持ちはリラックスで。