なっちゃんと花火を見る (21)

なっちゃんと花火を見る

花火といったら人混みだ、パニック障害の僕にとっては構えなければならないものであったが、全部がダメだとは思っていなかったのでなっちゃんと二人で見に行くことにした。

まずその日は、二人ともお気に入りの珈琲店に行った。クラシックが流れていて、その選曲が最高だとなっちゃんは言う、僕が「悲しそうな曲?」とか聞くと「当たり」と言った具合だ。器も80客ぐらいある中から二人を見てその時に選んでくれているように思う。同じ器が出てきたことは、まだない。珈琲の味もデザートの味もとても美味しい。そのお店の堂々とした感じが僕は大好きで、自信に満ち溢れているように感じる。光りすぎて眩しいのとは違って、どの角度から見ても光ってる感じ、僕もこういうお店のマスターになりたい

僕には取り柄がある、誰とでも話せるという単純なものだが、これで損をしたことはない。お店の人に「今日の花火をゆっくり見れる良い所ありませんかね?」と聞いてみた。にこっとしながら「ここから歩いても行けますよ、車を停められないと困るでしょうから、ここに停めて行っても良いですからね」と言ってもらえた。「ありがとうございます!」とは言ったものの、そこは沢山の人が集まる、人混みになる場所だと聞いていたので、「一ヵ所停めれそうな所があるので、もしそこに停められなかったら停めさせてください」と甘える事にした。

なっちゃんと車の中で「なんて良い人なんだろうね、お店の感じの通りの余裕の雰囲気とやさしさが出ているね」と話をした。なっちゃんは「なんで停めさせてもらわないの?」なんて聞く野暮な彼女ではない。

僕の停めようと思っていた所は空いていた!そこに停めて「ホームセンターとスーパーへGO」となった、二人ともウキウキしていた、ホームセンターではブルーシートを買った。そしてスーパーでは食べ物だ、スーパーが花火ムードに染まって人がいっぱいだった。

なっちゃんは「大丈夫?」と聞いてきた、笑いながら「たぶん大丈夫」と言った、それでも人が多かったので、少し逃げることにした。「ジュース売り場は少ないからちょっと逃げてくるね」と伝えておいたが、少し慣れたころになっちゃんがやって来て「一緒に選びたい」と言った。なんとも可愛らしい一言であったのとなっちゃんとしての、私のワガママ聞いて!といった感じがした。

選んでいると、なっちゃんがだんだん困りだした。「いっぱい食べた過ぎて・・・私が払うから、どんどん好きに買っていくから」と本当の事を言い出した、笑えて仕方なかった。「僕は、おにぎり二つとお茶で良いよ」と言うと「私が買ってあげるからもっと選びなよ」と買うことを推奨してきたので「サラダを二人で食べよう」とサラダを手に取った、大学芋もだったかな。そうしたらなっちゃんは、ニコニコしながらお菓子コーナーへ向かった、入念に選んでいた、やっぱり声をあげて笑ってしまった。

それで歩いて花火を見るところへ向かった。ぽつぽつと人がいたが、全然混んではいなかった、僕たちは好きに場所を選んで、5m先にはカップルが居た。

花火が始まって、暗さも段々と夜になった、花火の種類も派手になっていく。カップルの女の子は上手に彼に甘えている。付き合ってない二人の甘え方ではなかった、付き合っているカップルの甘え方だった。なっちゃんはそういうのが人前で苦手なのである。少し恥ずかしい気持ちになったのだろう。違う、女のジェラシーだ。僕は、なっちゃんに肩を寄せて「ココ!」と言わんばかりに、目で合図を送った。すると、なっちゃんはすっと自分の頭を僕の肩に委ねた。頭を撫でるとこちらを見てニコッとした。

でかい花火が見事に打ち上がり感動した。

フィナーレ前に皆が動き出した、渋滞だとすぐに分かったので、なっちゃんに「ごめん、フィナーレは車の中で見ることになる」と謝ったが、なっちゃんはそれで機嫌を損ねる野暮な彼女ではない。

もうすでに10分遅かったようで街は大渋滞だ、なっちゃんは車からフィナーレを見ているが、僕にはその余裕がなかった。車の調子が悪かったのだ。ミッションを入れるときに半クラから、入った途端にエンストするという、「初心者のミッションが下手な操作状態」の症状なのだ。ディーラーで調整してもらっていたのだが、時期でどうしてもダメな時がある。とても恥ずかしい気持ちと、操縦に気を付けないといけないので気疲れする。

なっちゃんが異変に気が付いて「焦らない焦らない」と言ってくれるのだけど、渋滞と重なって最悪な状態で、吹かし上げて入れるぐらいしか手がない。「運転が荒くなるけどちょっと我慢して」と言った。それと大渋滞だったので左はなるべくなっちゃんに見てもらった。パニック障害は関係なかった。いや、発作が出てもおかしくなかったが、なっちゃんが居たから大丈夫だった。「あんな人がいたけど大丈夫だった?私あんな人の流れちょっと怖かった」となっちゃんは後から言った。

帰り道はずっと渋滞だったので、なっちゃんの親に0時前には着くけど、遅くなると連絡を入れてもらった。なっちゃんは途中から寝ていた、たぶんなっちゃんは夕食後のてんかんの薬が効いて眠くなるんだと思う、たぶんね

今回は21という番号に花火を取り入れました、学校の先生の言う通り美術の内申点5に見えませんでしょうか?下の記事で事実をご確認ください。

中学生のころ その3

2019.08.27